~片麻痺の回復を「共同運動」から「分離運動」へ読み解くリハビリテーションの古典~

脳卒中後の片麻痺を評価するとき、私たちはつい「筋力があるか」「手が上がるか」「歩けるか」という見方をしてしまいます。もちろんそれも大事です。しかし、片麻痺の本質をもう一段深く見るなら、重要なのは単なる筋力ではありません。
本当に見るべきなのは、その運動がどれだけ分離しているかです。
肩を上げようとしたときに肘も一緒に曲がってしまう。手を伸ばそうとすると肩がすくむ。足を出そうとすると股関節・膝・足首がひとまとまりに動いてしまう。こうした現象は、本人が「余計な力を入れている」わけではありません。脳卒中によって、脳が個別の筋や関節を細かく制御する力を失い、より原始的で大きな運動パターンに頼らざるを得なくなっている状態です。
この片麻痺特有の運動回復を、弛緩、連合反応、共同運動、分離運動という流れで整理したのが、ブルンストローム法、あるいはブルンストローム・ステージです。
ブルンストローム法は、単に「麻痺の重症度を見る評価」ではありません。片麻痺の運動が、どの段階まで回復しているのか、どの程度まで共同運動から抜け出し、分離運動が可能になっているのかを観察するための考え方です。つまり、ブルンストローム・ステージとは、麻痺の程度を見るだけでなく、運動制御の成熟度を見るものだと言えます。
ブルンストローム法を作った人
ブルンストローム法を提唱したのは、Signe Brunnstrom、シグネ・ブルンストロームです。彼女はスウェーデン出身の理学療法士で、のちにアメリカで活動しました。ブルンストロームは1950年代から1960年代にかけて、成人片麻痺患者の運動回復を観察し、片麻痺にはある程度共通した回復の順序があることを示しました。現在「ブルンストローム法」と呼ばれるものは、彼女が片麻痺の評価と治療を神経生理学的に整理したアプローチです。(Life in the Fast Lane • LITFL)
特に重要なのは、1966年に発表された論文 “Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages” です。この論文でブルンストロームは、片麻痺の運動回復を段階的に評価する方法を提示しました。つまり、ブルンストローム・ステージの原型は1966年のこの論文にあります。(PubMed)
その後、1970年には彼女の代表的な著作 “Movement Therapy in Hemiplegia: A Neurophysiological Approach” が出版されました。この本は、片麻痺患者の運動行動、回復段階と評価、治療手技、片麻痺歩行、歩行準備と歩行訓練などを扱った、ブルンストロームの評価・治療体系の集大成とされています。日本でもこの考え方はPTだけでなく医師にも受け入れられ、一時期大きな影響を与えました。(医書ジェーピー)
ブルンストローム法が生まれた歴史的背景
ブルンストローム法が登場した時代は、脳卒中リハビリテーションが大きく変化していた時期です。
それ以前の麻痺の見方は、どちらかというと「筋力が何段階か」「関節がどれだけ動くか」という整形外科的・筋力評価的な視点が中心でした。しかし、脳卒中後の片麻痺では、単純な筋力評価だけでは説明できない現象が多く起こります。
例えば、麻痺側の肘屈曲はできるのに、肘伸展がうまくできない。手を開こうとしても、握る方向の緊張が強く出る。歩くときに足が伸展パターンに固まり、膝や足首を自由に分けて動かせない。これらは単なる筋力低下ではなく、中枢神経系の運動制御の障害です。
ブルンストロームは、片麻痺患者の運動回復を観察する中で、回復が「まったく動かない状態」から、いきなり正常運動に戻るわけではないことに注目しました。むしろ、多くの患者では、まず反射的・半随意的な反応が出現し、次に共同運動が強まり、その後に少しずつ共同運動から外れた分離運動が出現します。
この視点は、片麻痺を見るうえで非常に大きな転換でした。
つまり、麻痺は単に「動かない」だけではありません。回復の途中では、動くけれど自由には動かせないという段階があります。この「動くけれど分離できない」状態を臨床的に整理したことが、ブルンストローム法の大きな功績です。
ブルンストローム法の核心
「麻痺は、共同運動から分離運動へ向かう」
ブルンストローム法の中心にある考え方は、片麻痺の運動回復が、次のような流れをたどるというものです。
最初は、随意運動がほとんどみられない弛緩状態です。そこから、反射や連合反応としてわずかな筋収縮が出現します。次に、屈筋共同運動や伸筋共同運動といった大きな運動パターンが出てきます。その後、共同運動から外れた動きが少しずつ可能になり、最終的にはより自由で選択的な分離運動に近づいていきます。
ここで重要なのは、ブルンストローム法が「共同運動は悪いものだから、絶対に出してはいけない」と考えたわけではないことです。むしろブルンストロームは、回復初期には反射や連合反応、共同運動を利用してでも、まずは運動を引き出すことに意味があると考えました。運動が全く出ない段階では、感覚刺激、抵抗、反射、連合反応などを利用し、そこから半随意運動を引き出すという発想です。(Physiopedia)
これは現代的な運動学習の視点から見ると、議論の余地があります。現在の脳卒中リハビリテーションでは、課題指向型練習、反復練習、意味のある活動、段階的な難易度調整、筋力練習、電気刺激、ロボット、CI療法などが重視されます。カナダのStroke Best Practicesでも、上肢機能回復には意味があり、反復的で、段階的に調整され、課題特異的で、目標志向的な練習が強く推奨されています。(Canadian Stroke Best Practices)
しかし、ブルンストローム法の価値は今も残っています。それは、片麻痺の運動を観察するときに、その人がどの運動制御段階にいるのかを見抜く視点を与えてくれるからです。
連合反応とは何か
ブルンストローム法を理解するうえで欠かせないのが、連合反応です。
連合反応とは、ある部位に強い努力や抵抗運動を行ったときに、別の部位に無意識的・反射的な筋活動が出現する現象です。例えば、非麻痺側の手で強く握ると、麻痺側の手にも握るような反応が出る。体幹や下肢に力を入れたとき、麻痺側上肢に屈曲パターンが出る。こうした反応が連合反応です。
臨床で重要なのは、連合反応を「単なる異常反応」として片づけないことです。連合反応が出るということは、麻痺側にまったく出力がないわけではなく、何らかの神経系の興奮が麻痺側へ波及しているということでもあります。
ブルンストローム・ステージでいうと、StageⅡでは随意運動はまだ乏しいものの、連合反応や反射的な筋収縮が出現し始めます。この段階は、臨床的にはとても重要です。なぜなら、「まったく動かない」状態から、「条件によって筋活動が出る」状態へ変化しているからです。
ただし、連合反応が強いまま日常生活動作に入り込むと問題も起こります。たとえば歩行時に麻痺側上肢が強く屈曲する、立ち上がりで手が握り込む、努力すると肩甲帯や体幹まで過剰に緊張する。これらは、運動がまだ選択的ではなく、全身的な努力に巻き込まれている状態です。
したがって、連合反応は「あるか、ないか」だけでなく、どの程度出るか、どの動作で出るか、随意運動に移行できるかを見る必要があります。
共同運動とは何か
ブルンストローム法の中心概念が、共同運動です。
共同運動とは、複数の関節や筋群がひとまとまりのパターンとして動いてしまう現象です。片麻痺では、上肢や下肢が個別に自由に動くのではなく、屈筋共同運動、伸筋共同運動という大きなまとまりで出現しやすくなります。
上肢の屈筋共同運動では、肩甲帯の挙上・後退、肩関節外転・外旋、肘屈曲、前腕回外、手関節・手指屈曲といったパターンが出やすくなります。いわゆる「腕が曲がって固まる」ような典型的な片麻痺上肢の姿勢です。
一方、上肢の伸筋共同運動では、肩関節内転・内旋、肘伸展、前腕回内などのパターンが出やすくなります。
下肢では、屈筋共同運動として股関節屈曲・外転・外旋、膝屈曲、足関節背屈などがまとまって出やすくなります。伸筋共同運動では、股関節伸展・内転・内旋、膝伸展、足関節底屈・内反が出やすくなります。片麻痺歩行でみられる伸展パターン、内反尖足、ぶん回し歩行なども、この共同運動的な制御と深く関係します。
共同運動のポイントは、患者さんが「肘だけ伸ばしたい」「手だけ開きたい」「足首だけ上げたい」と思っても、個別の関節運動として出せないことです。脳が細かい運動を分離して制御できず、大きなパッケージ運動として出力してしまうのです。
つまり、ブルンストローム法で見るべきなのは、単に「動いたか」ではありません。
どのパターンで動いたのか。
共同運動の中で動いているのか。
共同運動から外れた動きができるのか。
それが分離運動として成立しているのか。
ここが臨床的に最も重要な観察点です。
分離運動とは何か
分離運動とは、共同運動のパターンから離れて、関節や筋群をより選択的に動かせる状態です。
例えば、上肢であれば、肩を外転させながら肘を伸ばす、肘を伸ばしたまま前腕を回内・回外する、手指を握るだけでなく開く、母指と示指でつまむ、個別の指を動かす、といった運動です。
下肢であれば、股関節や膝の大きな共同運動に巻き込まれずに、足関節背屈を出す、膝を選択的に屈伸する、立位や歩行の中で足部を制御する、といった運動が重要になります。
ブルンストローム・ステージでStageⅣ以降が重要になるのは、この分離運動が出現し始めるからです。StageⅢでは共同運動が随意的に可能になりますが、まだ運動は大きなパターンに支配されています。StageⅣでは共同運動から外れた運動が一部可能になり、StageⅤではより複雑な分離運動が可能になります。そしてStageⅥでは、運動はほぼ正常に近づきますが、スピードや巧緻性にはまだ問題が残ることがあります。
この流れを一言でいうなら、ブルンストローム・ステージとは、共同運動への依存から、分離運動の獲得へ向かう過程を評価するものです。
ブルンストローム・ステージの6段階
日本の臨床でよく使われるブルンストローム・ステージは、上肢、手指、下肢をそれぞれ6段階で評価します。海外の一般向け資料では7段階として紹介されることもありますが、臨床評価としては6段階で整理されることが多いです。ブルンストロームの1966年の運動検査法は、片麻痺の回復段階をもとにした評価として提示されました。(PubMed)
StageⅠ:弛緩
随意運動がみられない段階です。筋緊張は低く、麻痺側を自分の意思で動かすことが困難です。この段階では、肩関節亜脱臼、浮腫、疼痛、廃用、感覚障害への配慮が必要になります。
StageⅡ:連合反応・わずかな筋収縮
随意運動はまだ十分ではありませんが、連合反応や反射、努力性の運動によって、わずかな筋収縮が出現します。臨床的には、「何かが出始めた」段階です。ただし、運動はまだ選択的ではなく、本人の意思で自由に使える運動ではありません。
StageⅢ:共同運動の完成
屈筋共同運動や伸筋共同運動が随意的に出せるようになります。ここで「動くようになった」と見えますが、実際にはまだ大きな共同運動パターンに支配されています。痙縮も強まりやすく、運動は粗大で選択性に乏しい段階です。
StageⅣ:分離運動の出現
共同運動から外れた運動が一部可能になります。ここが非常に重要です。StageⅢからStageⅣへの変化は、単に筋力が上がったというより、運動制御が変化し始めたことを意味します。臨床では、ここから日常生活動作の質が大きく変わり始めます。
StageⅤ:分離運動の拡大
より複雑な運動の組み合わせが可能になります。共同運動の影響は残るものの、かなり選択的な動きができるようになります。上肢ではリーチ、把持、リリース、手指操作の可能性が広がり、下肢では歩行中の足部制御や膝制御が改善しやすくなります。
StageⅥ:ほぼ正常に近い運動
分離運動はかなり自由に可能になります。ただし、スピード、滑らかさ、巧緻性、疲労時の運動制御には問題が残ることがあります。つまりStageⅥでも「完全に元通り」とは限りません。
なぜ「分離しているか」が大事なのか
片麻痺のリハビリで重要なのは、動作ができたかどうかだけではありません。
例えば、食事動作でスプーンを口へ運べたとします。しかし、そのとき肩が強くすくみ、肘が屈曲共同運動に巻き込まれ、手指が過剰に握り込み、体幹を大きく代償しているなら、それは機能的には達成していても、運動制御としてはまだ未熟です。
逆に、見た目の動作量は小さくても、肘を伸ばしたまま手関節を動かせる、肩の過剰な挙上なしにリーチできる、手指を握った後に開ける、足関節を選択的に背屈できるなら、それは非常に大きな回復のサインです。
ブルンストローム法の面白さは、ここにあります。
この評価は、筋力だけを見るものではありません。
関節可動域だけを見るものでもありません。
ADLの可否だけを見るものでもありません。
麻痺側の運動が、どれだけ共同運動から自由になっているかを見るものです。
臨床家がブルンストローム・ステージを使う意味は、まさにここにあります。StageⅢの患者さんにStageⅤレベルの課題を求めても、代償や過緊張が強まるだけかもしれません。逆に、StageⅣに入り始めた患者さんに、いつまでも共同運動だけを繰り返していては、分離運動の可能性を伸ばせないかもしれません。
評価は、介入の入口です。ブルンストローム・ステージは、今その患者さんに必要な課題の難易度を見極めるための地図になります。
ブルンストローム法とFugl-Meyer Assessmentの関係
現代の脳卒中研究では、ブルンストローム・ステージよりも、Fugl-Meyer Assessment、通称FMAがよく使われます。FMAは1975年にAxel Fugl-Meyerらによって提案された脳卒中後の感覚運動機能評価で、現在も臨床研究で広く使われています。FMAはBrunnstromやTwitchellの「片麻痺の運動回復には段階性がある」という考え方をもとに、より定量的な評価として発展したものです。(PubMed)
FMAが研究で重視される理由は、点数化され、感度が高く、変化を追いやすいからです。一方、ブルンストローム・ステージは6段階の順序尺度であり、細かな変化を捉えるには限界があります。
ただし、ブルンストローム・ステージには臨床での強みがあります。それは直感的で、片麻痺の運動パターンを説明しやすいことです。新人療法士、看護師、患者さん、家族に対しても、「今は共同運動が強い段階です」「ここから分離運動を出していく段階です」と説明しやすい。
つまり、FMAは研究や詳細評価に強く、ブルンストローム・ステージは臨床的な把握と共有に強い評価だと言えます。なお、Brunnstrom Recovery Stageは神経生理学的指標と中等度に相関し、Motor Assessment Scaleなどの運動評価とも高い相関を示すという報告があり、片麻痺の運動回復評価として一定の妥当性が示されています。(PubMed)
ブルンストローム法は治療法なのか、評価法なのか
ここは少し整理が必要です。
日本で「ブルンストローム」と言うと、多くの場合はBrunnstrom Recovery Stage、つまり評価尺度を指します。一方、もともとのブルンストローム法は、評価だけでなく治療概念も含むものでした。
治療法としてのブルンストローム法では、回復初期に反射、連合反応、感覚刺激、抵抗運動などを使って筋活動を引き出し、その後、共同運動から分離運動へ進めていくという考え方がありました。Physiopediaの整理でも、動きがない段階では反射、連合反応、固有感覚・外受容刺激を使って筋緊張や運動を促通し、随意制御が出てきたら促通を減らしていくという原則が説明されています。(Physiopedia)
しかし、現代のリハビリテーションでは、ブルンストローム法を単独の治療体系として使うことは少なくなっています。現在の脳卒中リハでは、個別性、課題特異性、反復量、強度、患者の目標、実生活への汎化が重視されます。英国のNational Clinical Guideline for Strokeでも、脳卒中後の筋力低下には課題特異的で反復的、集中的な運動や活動を行うことが推奨されており、反復練習や課題練習が主要なリハビリテーションアプローチとされています。(National Clinical Guideline for Stroke)
したがって現代的には、ブルンストローム法は「これだけをやればよい治療法」というより、片麻痺の運動回復を理解するための臨床フレームワークとして使うのが適切です。
臨床でどう使うか
ブルンストローム・ステージを臨床で使うときに大事なのは、点数をつけて終わりにしないことです。
例えば、上肢StageⅢと判定したなら、「上肢がStageⅢです」で終わってはいけません。見るべきなのは、どの共同運動が強いのか、屈筋パターンが優位なのか、伸筋パターンが出せるのか、連合反応がどの場面で強まるのか、肩甲帯や体幹の代償はどうか、手指は上肢全体の回復と一致しているのか、といった細部です。
同じStageⅢでも、臨床像はまったく違います。
ある患者さんは、肘屈曲は強いが手指伸展が出にくい。
別の患者さんは、肩の挙上と体幹側屈が強く、リーチが代償的になる。
また別の患者さんは、下肢の伸展共同運動が強く、歩行時に内反尖足が出る。
つまり、ブルンストローム・ステージは「ラベル」ではなく、「観察の入口」です。
そして介入では、StageⅠ〜Ⅱでは安全なポジショニング、感覚入力、関節保護、筋活動の出現を丁寧に見ることが重要です。StageⅢでは、共同運動が出ること自体を回復の一段階として捉えつつ、それに固定されすぎないようにします。StageⅣ〜Ⅴでは、共同運動から外れた運動を引き出し、課題指向型練習やADL練習の中で分離運動を実用化していきます。StageⅥでは、巧緻性、スピード、耐久性、二重課題、実生活場面での安定性を高めていく必要があります。
ブルンストローム法の限界
ブルンストローム法には大きな価値がありますが、限界もあります。
第一に、6段階評価であるため、細かな変化を捉えにくいことです。特に研究や効果判定では、FMA、ARAT、Wolf Motor Function Test、10m歩行、TUG、FIMなど、目的に応じた評価と併用する必要があります。
第二に、ブルンストローム・ステージは主に運動麻痺の回復段階を示すものであり、感覚障害、失行、半側空間無視、注意障害、認知機能、疼痛、筋力、持久力、心理状態、環境因子までは十分に評価できません。
第三に、回復が必ずStageⅠからStageⅥへきれいに進むとは限りません。上肢、手指、下肢で回復段階が異なることもあります。手指だけが重く残ることもありますし、下肢は歩行可能でも上肢は共同運動から抜けにくいこともあります。
第四に、共同運動や連合反応を促通しすぎると、かえって異常パターンを強める可能性があります。現代リハでは、早期から過剰努力や代償を観察し、患者さんの目標に合わせて、意味のある課題の中で運動を再学習していくことが求められます。
それでもブルンストローム法が面白い理由
ブルンストローム法の面白さは、片麻痺の回復を「動く・動かない」の二択で見ないところにあります。
片麻痺の患者さんの腕が動いたとき、初心者は「動いた」と見ます。
少し経験を積むと、「どの筋が働いたか」を見ます。
さらに深く見る臨床家は、「どの運動パターンで動いたか」を見ます。
そしてブルンストローム的に見る臨床家は、「その運動は共同運動の中にあるのか、分離運動として出ているのか」を見ます。
この差は大きいです。
なぜなら、患者さんの未来を予測する視点が変わるからです。
単に筋力があるだけでは、ADLはきれいになりません。
単に関節が動くだけでは、生活動作にはなりません。
本当に必要なのは、環境や課題に合わせて、必要な関節を必要なタイミングで、必要な量だけ動かせることです。
それが分離運動であり、選択的運動制御です。
ブルンストローム法は、片麻痺の回復を「力」ではなく「制御」の問題として見せてくれます。ここに、今なお学ぶ価値があります。
まとめ
ブルンストローム法は、麻痺を“分離の程度”で見るための地図である
ブルンストローム法は、Signe Brunnstromによって提唱された、脳卒中後片麻痺の運動回復を理解するための古典的かつ重要な考え方です。
その中心にあるのは、片麻痺の回復が、弛緩から連合反応、共同運動、そして分離運動へ向かうという視点です。
この評価で見るべきものは、単なる筋力ではありません。
単なる可動域でもありません。
単なるADL能力でもありません。
見るべきものは、麻痺側の運動がどれだけ共同運動から分離しているかです。
StageⅡでは連合反応が出現し、StageⅢでは共同運動が随意的に可能になります。StageⅣ以降では、共同運動から外れた分離運動が出現し始めます。この「分離運動の出現」こそ、片麻痺リハビリテーションにおける大きな転換点です。
現代の脳卒中リハビリテーションでは、課題指向型練習、反復練習、筋力練習、CI療法、電気刺激、ロボット、FMAなど、より多様でエビデンスに基づいた評価・介入が使われています。それでも、ブルンストローム法の価値は失われていません。
なぜなら、ブルンストローム法は、患者さんの運動を深く観察するための言葉を与えてくれるからです。
「動いた」ではなく、
「共同運動で動いたのか」
「連合反応として出たのか」
「分離運動として出たのか」
「どれだけ選択的に制御できているのか」
この問いを持てるかどうかで、片麻痺の見え方は大きく変わります。
ブルンストローム法は古典です。
しかし、古いだけの知識ではありません。
片麻痺を深く見るための、今も使える臨床のレンズです。


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