「説明したときは分かっていたのに、次の日には同じことができない」「静かな訓練室では取り組めるのに、病棟や家に戻ると失敗が増える」。高次脳機能障害のある人を支える場面では、このような違いに出会います。目の前の失敗を「記憶が悪い」「集中できない」と名づけることはできますが、それだけでは、何を変えれば生活が楽になるのかまでは見えてきません。
例えば、予定を覚えるには、説明に注意を向け、言葉の意味を理解し、必要な情報を取り込み、後で思い出すことが必要です。疲れが強ければ話を追いにくくなり、説明が速すぎれば、記憶する前の段階で情報が抜けることもあります。こうした機能のつながりを考える手がかりが、ニューヨーク大学Rusk研究所の臨床から紹介されてきた「神経心理ピラミッド」です。[1,2]
このモデルの特徴は、注意・記憶・遂行機能という認知面だけでなく、リハビリテーションに取り組む意欲、障害の受容、自己同一性までを視野に入れることにあります。この記事では、図の形だけを覚えるのではなく、何のために作られ、どのように使うと支援に役立つのかを、研究上の限界も含めて考えていきます。
「認知の神経ピラミッド」の正式な名前と背景
「認知の神経ピラミッド」「認知機能のピラミッド」などの表現で紹介されることがありますが、Rusk研究所のモデルを指すとき、日本語の専門資料で用いられる名称は「神経心理ピラミッド」です。英語ではneuropsychological pyramidと表記され、Yehuda Ben-Yishayらによる、脳損傷後の全人的な神経心理学的リハビリテーションと結びついています。日本では、立神粧子氏の著書『前頭葉機能不全 その先の戦略――Rusk通院プログラムと神経心理ピラミッド』などを通して、その考え方が詳しく紹介されました。[1,9]
ここでいう全人的とは、検査で測れる認知機能だけを改善の対象にするのではなく、気持ち、人との関係、日常の役割、その人が大切にしてきた生き方も含めて支えるという意味です。覚える課題の得点が上がっても、失敗が怖くて外出できなければ、生活の回復には別の支援が必要です。反対に、記憶の弱さが残っていても、予定表を使い、周囲と確認する方法を身につけることで、参加できる活動が広がることがあります。
したがって、このピラミッドは脳の断面図でも、障害の重症度を採点する検査でもありません。下にある項目ほど人としての価値が低い、上まで到達しなければリハビリが失敗という意味もありません。複数の問題を関連づけ、支援の焦点を考えるための臨床モデルとして読むことが出発点です。
9つの階層を、図の上下だけで判断しない
紹介される図には複数の形があります。覚醒・注意・記憶・遂行機能を中心に、上部を「障害認識」として示す簡略化された資料もあれば、リハビリへの意欲から自己同一性までを示す図もあります。項目の数や言葉が違う図を、そのまま同一の版として混ぜないことが大切です。本稿では、立神氏の2010年の書籍を出典とする早川氏の2018年の論文掲載図に沿って、次の9つの階層を説明します。[1–3,10]
気づき:各層の働きと自分の行動を理解していく、全体に関わる視点
図:早川(2018)の掲載図〔出典:立神(2010)〕を参考に、名称を一部短縮して独自に作図。脳部位の配置や、一律の治療順序を示す図ではありません。
下から読むと、①神経心理学的リハビリテーションに取り組む意欲、②覚醒・警戒態勢・心的エネルギー、③抑制と発動性、④注意力と集中力、⑤コミュニケーションと情報処理、⑥記憶、⑦論理的思考力と遂行機能、⑧受容、⑨自己同一性、という構成です。原資料では「気づき」も図の側面に示されています。本稿では、これを頂上に付け足す10番目の階層としてではなく、各機能や自分の行動を理解していくことに関わる要素として扱います。[3]
このモデルが伝えようとする中心的な発想は、ある機能の困難を考えるとき、その働きを支える他の機能にも目を向けるということです。「記憶の訓練をしているのに成果が出にくい」という場面で、眠気、疲れ、注意の向け方、情報量などに立ち戻ると、課題の設定を変える手がかりが得られます。[2]
ただし、支える関係があることと、下の層を完全に回復させてから上の層へ進むことは同じではありません。疲労への配慮をしながら予定表を使う、注意の負担を下げながら調理を練習する、といった並行した支援も必要です。図を固定的な順番に変換するより、その人の活動を妨げている条件を見つけ、生活の中で確かめる使い方が適しています。
土台を支える――意欲、覚醒、疲労、抑制と発動性
最も下に「取り組む意欲」があると聞くと、「本人のやる気がなければ始まらない」と受け取ってしまうかもしれません。しかし、これを患者本人だけの責任にしてしまうと、モデルの使い方を誤ります。早川氏は、急性期から意欲を要求することの難しさを指摘し、本人と家族の状態を理解し、安心して支援を受けられる関係をつくることの重要性を述べています。[3]
臨床で考えたいのは、取り組まないという結果だけでなく、取り組みにくくしている事情です。課題の目的が分からない、説明を理解しきれていない、疲れ切っている、失敗が続いて自信を失っているなど、見直すべき条件は一つではありません。これは特定の患者の原因を断定する説明ではなく、支援者が状況を確かめるための視点です。「もっと頑張りましょう」と促す前に、本人が何を望み、今の課題をどう受け止めているかを聞くことができます。
次の階層にある覚醒・警戒態勢・心的エネルギーは、活動に向かう準備状態として理解すると分かりやすくなります。ここでの警戒態勢は、他人を疑うという意味ではなく、必要な刺激に反応できる構えに近い言葉です。また、心的エネルギーという表現は、脳内のエネルギー量を直接測った数値ではありません。モデルに用いられる臨床的な表現であり、眠気や疲れ、活動の持続しやすさを丁寧に観察する必要があります。[2,3]
外傷性脳損傷を対象とするINCOG 2.0の注意・情報処理に関するガイドラインでは、注意の問題に関わる要因として、聴覚・視覚、疲労、睡眠と覚醒の乱れ、不安、抑うつ、痛み、薬剤などを確認することが勧められています。これはピラミッドの階層を証明したという意味ではありませんが、注意課題の成績だけで対応を決めず、活動を取り巻く条件を調べる必要性を支えています。[5]
抑制と発動性は、行動を調整するうえで対になる視点です。抑制は反応や行動をいったん止めること、発動性は行動を始めることに関わります。説明が終わる前に取りかかってしまう人と、やることを理解していても最初の一歩が出にくい人では、同じ声かけが役立つとは限りません。前者では開始前に確認する合図を設け、後者では最初の動作を分かりやすく示すなど、観察した困難に応じて援助の形を変えることが考えられます。
ここでも、「始めないから意欲がない」「止められないから性格の問題」と直結させないことが重要です。行動の開始や停止そのものに難しさがある可能性を考え、理解、疲労、感情、周囲からの刺激などと合わせて評価します。下位の項目は、本人に努力を要求するための説明ではなく、支援を具体化するための問いとして使えます。
注意から記憶へ――「覚えられない」の手前を見る
注意力と集中力は、必要な情報を選び、課題に向け続け、状況に応じて切り替える働きに関わります。会話をしながら荷物を整理する場面と、静かな場所で一つの作業だけを行う場面では、必要な注意の使い方が違います。「集中できるか、できないか」という一つの評価だけでは、実際の生活でどこが難しくなるのかを捉えきれません。
例えば、予定を聞きながらメモを取ることが難しい場合、記憶課題を増やす前に、話を聞く時間と書く時間を分ける方法を試せます。机の上の物を減らす、説明を一つずつにする、重要な部分を見える形にする、といった工夫も候補になります。これらは能力を低く見積もるための配慮ではなく、その人が力を発揮できる条件を探す試みです。注意の分類や生活場面の見方は、関連記事「注意障害とは?4つの注意機能・評価方法・リハビリと生活支援を解説」でも扱っています。
コミュニケーションと情報処理の階層では、情報を受け取る速さと正確さ、それをやり取りする過程を考えます。返答まで時間がかかるからといって、理解していないとは限りません。話し手が答えを待たずに説明を追加すると、処理しなければならない情報がさらに増えることがあります。まず一つの説明を伝え、応答を待ち、どのように理解したかを確認するという進め方には、支援者側の調整が必要です。
一方で、情報処理の問題だけで、すべての会話の難しさを説明することもできません。言語の理解や表出、相手の意図の読み取り、対人場面の状況なども関わるため、必要に応じて専門的な評価につなげます。INCOG 2.0の認知コミュニケーションに関する指針も、本人の生活場面と目標に即した介入や、会話相手への支援を重視しています。[8]
そのうえで記憶を考えると、「情報が十分に取り込まれていなかった」のか、「取り込んだ情報を保つことが難しい」のか、「必要なときに取り出せない」のかという問いが生まれます。これらは、短いやり取りだけで判定できるものではありません。それでも、説明した直後には言い直せるか、時間がたつとどうなるか、手がかりがあれば思い出せるかを、専門的な評価と生活の観察で確かめていくことは役立ちます。
記憶の支援には、覚える力を使う練習と、覚えておく負担を外に分ける方法の両方があります。予定表、ノート、スマートフォンの通知などは後者に当たります。INCOG 2.0では、重い記憶障害に対して外的な補償手段を重視し、本人の実際の活動や環境に合わせて使い方を教えることを勧めています。[6]
大切なのは、道具を渡したことを支援の完成としないことです。どこに置くか、いつ見るか、誰と確認するかまで具体化しなければ、予定表があっても予定を思い出せないことがあります。「ノートを持っている」から「必要な場面で確認できる」へ目標を置き直すと、訓練室での練習を生活へつなげやすくなります。
遂行機能と気づき――自分の方法を調整する力
論理的思考力と遂行機能の階層では、情報を整理して考え、目標を決め、手順を組み立て、実行中の様子を確かめ、必要なら方法を変える働きに目を向けます。個々の動作を行えることと、一連の活動を最後まで管理できることは同じではありません。服を一枚ずつ扱うことができても、翌日の予定と天気に合わせて持ち物を準備する活動では、複数の条件をまとめる必要があります。
支援の例としては、始める前に目標と手順を短く確認し、途中で一度立ち止まり、終わった後に結果を振り返る方法があります。これは本稿で示す一般的な考え方であり、特定の訓練法の正式な手順ではありません。手順表の情報量、確認の回数、支援者の合図をどの程度にするかは、本人の理解や疲労、活動の危険性などに応じて調整します。
INCOG 2.0の遂行機能に関する指針では、目標管理などのメタ認知的な方略の指導や、自己モニタリングを高めるフィードバックが取り上げられています。メタ認知とは、自分がどのように考え、取り組んでいるかを捉える働きです。課題の正解だけを教えるより、「どこで迷ったか」「どの方法が役立ったか」を確認することが、別の場面で方法を選ぶ力につながる可能性があります。[7]
ここで重要になるのが、図の全体に関わる「気づき」です。障害の名前を知っていること、実際の活動中に困難に気づくこと、その経験を次の予定や行動に生かすことは、区別して確かめる必要があります。「記憶が苦手です」と説明できても、予定が重なる場面ではメモを使い忘れることがあります。その人が何を理解し、どの場面では理解を行動に結びつけにくいのかを見ることが大切です。
気づきを支えることは、失敗を繰り返し突きつけることではありません。本人の見通しを聞き、安全に取り組める課題で実際の様子を確かめ、うまくいった方法と難しかった条件を一緒に振り返ります。家族と本人の認識に違いがある場合も、すぐにどちらかが間違っていると決めるのではなく、見ている場面や支援の量が違わないかを確認できます。モデルを共通の言葉にする目的は、対立を強めることではなく、対処できる問題を一緒に見つけることにあります。
受容と自己同一性――生活を取り戻すという到達点
上部に受容と自己同一性が含まれることは、このピラミッドが単なる認知機能一覧ではないことをよく表しています。受容は、「もう元には戻らないから諦めること」とだけ理解すべきではありません。できることと支援が必要なことを知り、自分に合う対処を選びながら生活を組み立てていくという視点から読むことができます。[1,3]
ただし、悲しみや悔しさが残ることを、受容できていない証拠として扱うのは適切ではありません。役割や生活の変化に対する気持ちは、出来事によって揺れるものです。支援を利用して働き始めた後にも、以前と比較して落ち込むことはあり得ます。支援者が望む前向きな言葉を引き出すことより、本人が困ったときに相談し、自分にとって意味のある活動を続けられることに目を向けたいところです。
自己同一性とは、自分を自分として捉える感覚に関わる言葉です。仕事、家庭での役割、趣味、人との関係などは、その感覚を支える大切な要素になり得ます。病気や事故の後にすべてを以前と同じ形へ戻せなくても、大切にしたい価値や役割を別の方法で保てる場合があります。例えば、以前と同じ量の家事を担えなくても、道具や時間を調整して家族の食事づくりに参加することには、その人にとって独自の意味があります。
こうした生活上の例は、本稿でモデルの意義を説明するために挙げたもので、特定のプログラムの効果を示す症例ではありません。また、自己同一性を一つの課題で測定し、頂上に到達したかどうかを判定することもできません。図の上部は、認知機能への働きかけを、その人の尊厳や生活の意味へ結びつけて考えるための視点として受け止めるとよいでしょう。
日常生活の場面で使う――架空の例から考える
ここで、退院後に簡単な朝食を自分で準備したい人を想定します。以下は説明のための架空の例であり、実在の患者の経過や治療成果ではありません。この人は、個々の道具の使い方は分かりますが、準備の途中で手が止まり、家族からは「手順を忘れてしまう」と見られているとします。
まず、失敗した場面を具体的にします。始める前から眠そうなのか、声をかけられると手順を見失うのか、最初の動作を示すと続けられるのか、複数の物が並ぶと探せなくなるのかによって、確かめたい点は変わります。ピラミッドは、この観察を整理するために使えますが、図だけで記憶障害や遂行機能障害を診断することはできません。
| 観察する場面 | 確かめたい点 | 支援を考える例 |
|---|---|---|
| 活動の後半に止まりや間違いが増える | 疲労や注意負荷、作業時間との関係 | 工程や時間帯を調整し、休息を入れた条件で比べる |
| 最初の一歩が出にくい | 手順の理解と行動の開始を分けて見る | 最初の工程を目で確認できるようにする |
| 話しかけられると途中が分からなくなる | 同時に求める注意の量 | 会話と作業を分ける、再開位置に印をつける |
| 手順表があっても見ない | 道具の位置、確認する合図、使う習慣 | 見るタイミングまで含めて練習する |
| 一つの方法にこだわり行き詰まる | 結果の確認や方略の切り替え | 途中の確認点と代わりの方法を一緒に決める |
表は観察を整理するための例です。一つの行動と一つの障害を対応させる診断表ではありません。
支援の前後では、完成したかどうかだけでなく、必要だった合図、確認の回数、疲れ、本人の負担感も記録します。家族がすべて先回りして成功した場合と、本人が手順表を使って進められた場合では、次に考える支援が違います。「できた」という結果の裏にある条件を記録すると、他の支援者にも方法を引き継ぎやすくなります。
そのうえで、朝食を準備できることが本人にとって何を意味するかを確認します。自立したい、家族の役に立ちたい、好きな食事を自分で選びたいなど、目標の背景は人によって異なります。認知面への配慮を本人の願いと結びつけることで、下位の機能から上位の生活の意味までを見渡すという、モデルの特徴を生かせます。
研究から言えることと、ピラミッドだけでは言えないこと
神経心理ピラミッドを使うときには、モデルの分かりやすさと、科学的に検証された範囲を区別する必要があります。神奈川リハビリテーション病院の解説では、このピラミッドを、認知リハビリテーションとRusk研究所の臨床経験から形成された仮説として紹介し、用語や検証には課題が残ることも示しています。したがって、9つの項目が誰にでも同じ強さで関連し、必ず同じ順番で回復することが確立している、と説明するのは行き過ぎです。[2]
一方、認知機能、感情、行動を関連づける発想は、その後の介入研究にも引き継がれています。2024年に発表された、脳腫瘍を経験した人と介護者を対象とするImPACTプログラムの研究計画論文では、Ben-Yishayのピラミッドを概念的な基盤の一つに位置づけています。ただし、その論文は研究方法とプログラムを示したものであり、それ自体を効果の確証として扱うことはできません。対象も、外傷性脳損傷だけに限定されたものではありません。[9]
また、注意、記憶、遂行機能、認知コミュニケーションについては、INCOG 2.0のように、個々の介入を研究に基づいて整理した指針があります。これらの推奨は、ピラミッドの図そのものを検証した結果ではなく、具体的な支援方法を選ぶための別の根拠です。特にINCOG 2.0は外傷性脳損傷を中心とするため、脳卒中、認知症、発達障害などへ同じ結論をそのまま広げることには慎重さが必要です。[4–8]
図が便利だからこそ、すべてを図の中へ押し込めないことも大切です。視覚や聴覚、言語、身体機能、痛み、家族の負担、住環境、職場の条件など、活動を左右する事柄はほかにもあります。ピラミッドで仮説を立て、必要な評価を行い、実際の活動の変化で確かめるという往復があって、初めて臨床の助けになります。
子どもの支援にこの図を応用する場合にも、もともとの脳損傷リハビリテーションの文脈と、発達過程の理解は分けて考える必要があります。「この子は土台の段階だから、上の学習はまだ早い」と図だけで決めてしまえば、その子に必要な学習機会を狭めるおそれがあります。年齢、得意なこと、感覚や言語の特性、本人の希望などを評価し、その領域で確かめられた支援と照らし合わせることが必要です。
チームで共有するのは、階層の名前より「役立つ条件」
作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、心理職、看護師、医師、家族などが同じ人を支えるとき、このモデルは観察を整理する共通の言葉になります。ただし、「注意の層に問題がある」と伝えるだけでは、次の担当者が何を変えればよいか分かりません。「一度に二つ説明すると取り違えるが、工程ごとに示すと進めやすい」と、具体的な場面と支援の条件まで共有することが大切です。
評価でも、検査結果と生活上の観察を組み合わせます。検査は機能の特徴を知る重要な情報ですが、そこでの得点だけで、家事、移動、復職などの可否を一括して判断するものではありません。本人の目標に合わせて、必要な活動、その活動にかかる負荷、利用できる援助を確認し、支援後に何が変わったかを見ます。このような個別化された評価と介入は、INCOG 2.0が示す認知リハビリテーションの基本方針とも重なります。[4]
家族には、本人を常に訓練し続ける役割を求めるのではなく、分かりやすい伝え方や確認方法を一緒に考えることができます。本人の困難を理解することと、家族がすべての負担を引き受けることは別です。本人と家族の双方が続けられる方法を探し、必要なサービスや専門職へつなげることまで含めて、生活を支える計画にしていきます。
神経心理ピラミッドの価値は、目の前の失敗を一つの能力や本人の努力に閉じ込めず、その背景と生活全体に視線を広げられることにあります。注意や記憶の改善を目指すと同時に、残る困難を補い、自分に合う方法を選び、大切な活動へ参加していく。その過程を本人と一緒に考えるとき、このモデルは、認知機能とその人らしい生活をつなぐ手がかりになります。
テーマを深く学ぶための関連書籍
『前頭葉機能不全 その先の戦略――Rusk通院プログラムと神経心理ピラミッド』(立神粧子 著、Yehuda Ben-Yishay・大橋正洋 監修、医学書院、2010年、ISBN 978-4-260-01180-8)は、今回のテーマが副題に明記された専門書です。出版社の公開目次では、神経心理ピラミッドの章に加え、通院プログラム、心のケア、自己受容・自己同一性などが取り上げられています。モデルの背景と全人的な視点を学びたい医療・福祉関係者に適した一冊です。[1]
家族による治療体験をもとにプログラムの詳細を伝える書籍であり、2010年刊行です。個々の治療の有効性を判断するときは、体験の記述と比較試験の知見を区別し、現在の対象者に合うガイドラインや研究も合わせて確認すると読み方が深まります。
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参考文献・資料
- 立神粧子 著、Yehuda Ben-Yishay・大橋正洋 監修.前頭葉機能不全 その先の戦略:Rusk通院プログラムと神経心理ピラミッド.医学書院;2010.ISBN 9784260011808.出版社の書誌・序文・目次
- 青木重陽.高次脳機能障害のリハビリテーション 第6回「Rusk研究所の神経心理ピラミッド」.神奈川リハビリテーション病院の公開資料.PDF
- 早川裕子.作業療法士の立場から.高次脳機能研究.2018;38(3):292–296.J-STAGE PDF
- Bayley MT, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury: Methods, Overview, and Principles. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):7–23. doi:10.1097/HTR.0000000000000838
- Ponsford J, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part II: Attention and Information Processing Speed. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):38–51. doi:10.1097/HTR.0000000000000839
- Velikonja D, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part V: Memory. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):83–102. doi:10.1097/HTR.0000000000000837
- Jeffay E, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part III: Executive Functions. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):52–64. doi:10.1097/HTR.0000000000000834.2024年の訂正告知
- Togher L, et al. INCOG 2.0 Guidelines for Cognitive Rehabilitation Following Traumatic Brain Injury, Part IV: Cognitive-Communication and Social Cognition Disorders. J Head Trauma Rehabil. 2023;38(1):65–82. doi:10.1097/HTR.0000000000000835
- Buskbjerg CR, et al. Engaging carers in neuropsychological rehabilitation for brain cancer survivors: The “I’m aware: Patients And Carers Together” (ImPACT) program. Contemp Clin Trials. 2024;138:107419. 著者所属大学の公開論文PDF
- いわてリハビリテーションセンター.岩手県高次脳機能障がい者サポートブック「未来ノート」:神経心理ピラミッド.公開PDF
資料確認日:2026年10月23日。参考文献1は出版社の公開情報と、文献2・3によるモデルの紹介を確認しています。本記事の図表と架空例は、資料を踏まえて作成した独自の説明です。


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